「やちむん」とは? 歴史や種類、人気の模様や使い方など

やちむんの起源と歴史

「やちむん」とは、琉球(現在の沖縄)の方言で「焼き物」を意味します。この美しい焼き物は、約400年前から沖縄県内の壺屋エリアや読谷村を中心に発展してきました。やちむんは琉球王国時代から始まり、東南アジア諸国や中国、日本の影響を取り入れながら、独自のスタイルと技法が育まれました。その歴史と美意識は、多様なデザインや形状の作品に息づいています。

魅力的なやちむんのスタイル

やちむんは、壺屋焼として知られる焼き物が代表的です。壺屋焼は、大きく「荒焼」と「上焼」の2つのスタイルに分けられます。

荒焼(アラヤチ):
釉薬をかけずに焼き締められる荒焼は、素朴な風合いと土の質感が魅力。南蛮焼とも呼ばれ、陶土の生きた表情がその特徴です。

上焼(ジョーヤチ):
釉薬を用いて高温で焼成される上焼は、色鮮やかなデザインが特徴。食器や酒器などの日用品として利用されるほか、美しい模様が器の魅力を引き立てます。

やちむんの模様と技法

唐草:
やちむんの中でも多く見られる文様で、永遠の命や長寿、子孫繁栄を象徴するツタの模様です。ねじれた唐草は永久不変を表現しています。沖縄の県花でもある「デイゴ」の花をイメージしたものが多くみられます。

点打ち:
点打ちはやちむんでよく見られる手描きの模様で、丸い点が独特のパターンを形成します。手仕事の温かみが感じられ、親しみやすい印象を与えます。この模様は、やちむんの作品に個性的なアクセントを加えています。

線彫り:
魚紋線彫りなどの繊細な模様が有名。魚の子孫繁栄を象徴し、結婚祝いなどにも用いられます。

印花:
やちむんでよく見られる可愛らしい花の文様を「インガー」と呼びます。これは印刷のような技法で、器の表面に花の模様を描いています。

イッチン:
泥状の土や釉薬をスポイトのような道具で器に施し、立体的な線や文様を作る技法です。独特の質感とデザインを生み出します。

掻き落とし:
素地の土に色を重ね、表面を削ることで異なる色を露出させる技法です。層のある美しいデザインが生まれます

象嵌:
異なる色の土を器にはめ込むことで装飾を施す技法です。多様な模様や色の組み合わせが可能です。

しのぎ:
素地の表面を削ってつくられる稜線文様で、デザインの幅が広がります。

飛び鉋:
ばねのような道具を使用して生地の表面を点々と削り、連続性のある模様を作り出す技法です。幾何学的でモダンなデザインが特徴です。

やちむんの酒器

やちむんの酒器は、沖縄の風土や人々の生活に合わせて様々な用途に応じた形状やデザインが生まれてきました。これらの酒器は機能性と美しさを兼ね備え、沖縄の文化や祝いの席での使用に特化しています。以下にいくつか代表的な酒器の例を挙げてみましょう。

カラカラ:
カラカラは、振るとカラカラと音がすることからその名がついた酒器です。座りやすい丸い形状で、じっくりと泡盛を楽しむのに適しています。カラカラは、酒の香りを楽しむための大きめの口が特徴で、泡盛の香りを引き立てる役割を果たします。

嘉瓶(ゆしびん):
嘉瓶は、ひょうたんのような独特の形状を持つ酒器で、主にめでたい席や祝い事で使用されます。その特異な形状からも分かるように、沖縄の伝統や独自の文化に根ざした酒器です。

抱瓶(だちびん):
抱瓶は、肩から下げて持ち運びやすいようにデザインされた酒瓶です。携帯性があり、外出先で泡盛を楽しむために使われます。胴体に紐を通して肩から提げることができるため、手軽に持ち運ぶことができます。

チューカー:
チューカーは、沖縄の方言で「急須」を意味し、主に酒や茶を入れるための容器です。急須のような形状で、液体を注ぐ際に香りを引き立てる効果があります。

お猪口:
お猪口は、貴重な古酒を楽しむ際に使用される小さなおちょこのような酒器です。一般的に小ぶりで、古酒を少しずつ楽しむためのものです。

これらの酒器は、沖縄の文化や独自の風習に深く根ざしており、泡盛を飲む際の体験や雰囲気を豊かに演出します。形状やデザインだけでなく、それぞれの酒器に込められた意味や歴史も重要な要素です。

やちむんの代表作家や人気の窯元

金城 次郎

やちむんの作家として一番に知っておきたいのが沖縄県で初の人間国宝でもある金城次郎氏。代表する絵柄の「魚紋」と「海老紋」は、その名の通り、持つ魚や海老が描かれた模様です。これらの絵柄は、器の表面に描かれることで、一気に作品にユーモラスな雰囲気と遊び心が加わります。

相馬正和(陶眞窯)

高江洲育男氏に師事し、壺屋での修行の後、独立。壺屋焼の伝統を守りながらも、「常に新しいものを」を合言葉に新たな作品を作り続けています。

新里竜子(南端pottery)

細かいしのぎや透かし模様が美しい、ブロンズやクリーム色のシックな色合いの器が代表的です。古典的なやちむんのイメージとは異なる、現代的で洋風な作風で人気急上昇の女性作家です。

宮城正幸(宮城陶器)

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シンプルさと力強さ、そして気品が特徴です。日々の食卓や特別なおもてなしの場でも、宮城さんの器は頼れる存在となっています。壹岐幸二さんのもとでの10年間の修業を経て、2013年に独立しました。その経験を通じて培った確かな技術と、心を込めた思いが、彼の作品に反映されています。

育陶園

沖縄の那覇に位置する「育陶園」は、約300年にわたり続く伝統と現代の融合を追求する壺屋焼窯元です。この窯元は、沖縄の素材である土や釉薬にこだわり、古来から受け継がれてきた伝統的な技法と文様を大切にしながら、現代の生活に寄り添ったモノづくりを実践しています。

やちむんの里とは?

1970年代には、公害問題により焼成方法が変更されるなど、陶工たちにとって大きな転機が訪れました。この時、沖縄県中部の読谷村が陶工たちの救済の場となりました。読谷村の元米軍用地に陶芸の里が形成され、登り窯が建設されました。この「やちむんの里」は、約50の店舗や窯元が集まる場所となり、観光地としても知られるようになりました。

読谷やちむんの里は、やちむんの伝統的な技術と文化を尊重しながら、観光や産業と結びついた場所としての発展を遂げています。

まとめ

やちむんは、琉球の美しい自然や文化を表現する媒体として、その魅力を多くの人々に伝え続けています。その作品は、日常の食卓や部屋を彩るだけでなく、琉球の歴史と心意気を受け継ぐ大切な存在です。ぜひ日常の中にやちむんを取り入れてみてはいかがでしょう。

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