「波佐見焼」とは? 特徴や魅力、窯元や陶器市情報

波佐見焼の起源と歴史的変遷

波佐見焼の歴史は、日本の陶磁器産地の中でも特筆すべき400年に及ぶ長い歴史を誇っています。この焼きものの産地は、日本初の磁器として知られ、その焼きものの知名度も高いことで名高い有田焼と並び称される存在です。波佐見焼は、有田焼と同様に400年にわたって窯業のまちとして発展してきました。

波佐見焼の起源は、1598年(慶長3年)に大村藩主の大村喜前が朝鮮から陶工を連れ帰ったことにより始まります。翌年の1599年(慶長4年)から、現在の長崎県波佐見町にある畑ノ原、古皿屋、山似田の3か所で窯を築き、焼きものの制作が開始されました。初期の焼成物は主に陶器に釉薬を施したものでしたが、1602年(慶長7年)以降、新たな磁器の原料が見つかり、染付や青磁などの制作が増えていきました。

波佐見焼は、特に「くらわんか碗」という器で知られています。江戸時代の庶民にとって手ごろな価格で利用できるこの丈夫な器は、船上で飯や酒を売るために使われ、多くの庶民の食卓を彩りました。このような広く普及した器が、波佐見焼の歴史と庶民文化との結びつきを象徴しています。

しかし、長らく波佐見焼は有田焼の一部として扱われ、その名前が表に出ることはありませんでした。これは、分業制を取る焼きもの産地の特性から生地屋や型屋を共有していたためでもあります。しかし、2000年頃に食品の産地偽装問題が社会的な問題となり、陶磁器にも正確な産地表示が求められるようになりました。その結果、波佐見町で生産された器は正確な産地表示を行うようになり、「波佐見焼」として新たな出発を果たしました。

波佐見焼の魅力

波佐見焼の魅力は、その透き通るような白磁の輝きと繊細な呉須(藍色)の絵付けによる独自のデザインにあります。以下に波佐見焼の魅力をまとめてみましょう。

美しい白磁と繊細な呉須の絵付け:
波佐見焼は、透き通るような白磁の輝きが特徴です。この白磁に、呉須と呼ばれる藍色の顔料で繊細な絵付けが施されます。色とりどりの絵付けとは異なる独自の風合いがあり、シンプルながらも洗練されたデザインが魅力です。

独自のデザイン:
華やかな絵付けの有田焼とは一線を画す、波佐見焼のシンプルなデザインは独特の味わいがあります。唐草模様や編み目模様など、シンプルな模様が日常使いの食器として人々から支持を得ています。北欧デザインを連想させるお洒落でモダンな見た目は、現代のセンスにもマッチしています。

分業制による高品質な製品:
波佐見焼の製造方法は、成形、型起こし、施釉、窯焼きなどの工程を異なる職人が担当する分業体制です。これにより、多くの人々が協力し、高品質な製品を効率的に生産することが可能となっています。各工房での専門的な技術の結集が、美しい焼きものの品質につながっています。

伝統とモダンの融合:
波佐見焼は、伝統的な要素とモダンなデザインの融合が特徴です。透明感のある白磁と呉須の絵付けが、古典的な美意識と現代の洗練されたデザインを見事に調和させています。そのため、和食はもちろん、洋食や中華、デザートなど、多様な料理との相性が抜群です。

庶民文化の象徴:
波佐見焼は、かつて江戸時代の庶民にとって手に届かない高級品とされていた陶磁器の概念を覆しました。分業制を活用し、効率的な生産方法によって多くの人々に提供され、広く普及しました。そのため、現代でも日常使いの食器として親しまれています。

丈夫で軽い素材:
波佐見焼は、古くから日常食器として使用されてきたため、その丈夫さが魅力です。また、軽量な素材なため、幅広い世代にとって扱いやすく、日常使いに適しています。

波佐見焼は、400年以上にわたる歴史と伝統を背負いつつ、現代のデザインとニーズに応える美しい焼きものとして、多くの人々に愛され続けています。その透明感ある白磁と繊細な絵付けの魅力は、食卓を彩り、暮らしに優雅さをもたらしています。

波佐見焼の釉薬とその特徴

古くは美しい白磁と繊細な呉須の色付けが定番でしたが、現代ではカラーパレットのように様々な色彩が人気となっており、使用される釉薬の種類も多々あります。波佐見焼の多くは分業制のため「釉薬屋」が釉薬を作って窯元に収めます。

波佐見焼の代表的な窯元

白山陶器
白山陶器は、1779年に創業され、1958年に現在の形になりました。波佐見焼の400年以上の歴史を継承しながら、現代風のデザインとシンプルな美しさを融合させた器を制作しています。そのデザインは、グッドデザイン賞やロングライフデザイン賞など多くの賞を受賞し、北欧食器のような「ブルーム」、豊富な絵柄の「平茶わん」、可愛らしい「とり型はしおき」など代表作がたくさんあります。白山陶器の作品は、伝統と革新が調和し、機能性と美しさが共存した魅力的な焼きものとして多くの人々に支持されています。

マルヒロ
「中川政七商店」のコンサルティングを受け、リブランドしたことで波佐見焼人気の立役者となったのがマルヒロです。アメリカンヴィンテージを思わせる無骨なデザインとアンティークっぽい色使いが特徴の「HASAMI」シリーズ。海外のテイストを盛り込んだ「HASAMI」とは対照的に、生まれたのが「BARBAR」シリーズ。和食器にモダンな要素を取り込み若者にも人気になりました。

光春窯
1984年に中尾山で創業された窯元で、日常使いに適したシンプルなデザインのうつわを制作しています。そのコンセプトは「日々の食事、日々の食卓を楽しむ」ことであり、テーブルに置かれた際に周囲の雰囲気を引き立てるうつわを追求しています。光春窯は多種の釉薬を独自に開発し、釉薬と焼成によって多彩な色彩や色調のうつわを創り出すことに長けています。特に「Naturalシリーズ」は、シンプルでモダンな形状と自然の風景を連想させる落ち着いた色合いが特徴で、微妙な温度変化による釉薬の表情も楽しむことができます。

NISHIYAMA
デイジーの花が描かれた「デイジー」シリーズが代表作です。ひとつひとつ手描きのため、花の色に濃淡があり表情が一枚一枚異なるのも魅力です。このシリーズはふるさと納税にも選ばれています。他にも現代の食卓にマッチするモダンな柄のシリーズがたくさんあります。

現代の波佐見焼

400年以上前から受け継がれてきた伝統的な製法と、現代の感覚が結びついた波佐見焼はリーズナブルな価格もあり、器に興味を持ち始めた人のエントリーラインとしても人気です。おしゃれなカフェやrレストランで使われることも多く、日常の中で目にすることの多い焼き物とも言えます。波佐見にはファンがついている有名窯元がいくつもあり、こらからの焼き物を支えていく重要な産地となっています。

波佐見焼の陶器市ー波佐見陶器まつり

波佐見陶器まつりは、毎年GW中に長崎県で開催される陶器のお祭りです。約150の窯元やメーカーが集まり、約30万人が訪れる人気の陶器市で、その来場者数は増加傾向にあります。波佐見町のやきもの公園をメイン会場に、直接対話しながら器を選ぶ楽しみもあります。有田陶器市と同時期に開催されることもあり、アクセスも便利です。やきもの好きには待ち遠しい春の風物詩となっています。

まとめ

おしゃれで使いやすい波佐見焼はこれから器を集めたいという人にもおすすめの焼き物です。量産できるものが多いため入手が困難ではないものがほとんどなのも嬉しい点です。お気に入りの窯元を見つけて陶器市に足を運ぶのも楽しいでしょう。

Narrative Platformでお気に入りの器を見つける

作家ものの器を探すなら「Narrative Platform」。動画で作家さんの作陶の様子やこだわりなど、詳しく紹介しています。
https://narrative-platform.com/collections/

Share