「小鹿田焼」とは? 特徴や魅力、窯元や陶器市情報

小鹿田焼の起源と歴史的変遷

日本の陶芸の中でも有名な小鹿田焼(おんたやき)は、小石原焼と大きな関係があります。小石原焼は、1682年に筑前福岡藩の藩主が、当時磁器の生産が盛んだった伊万里に倣って、焼き物を作り始めたことから始まりました。その後、高取焼との交流により、陶器の製造が本格化しました。そして、この小石原焼が小鹿田焼の前身とされています。

小鹿田焼の本格的な始まりは、宝永2年(1705年)に小石原焼の陶工、柳瀬三右衛門が黒木十兵衛に招かれ、小鹿田皿山(現在の大分県日田市)に登り、窯を築造したことによります。当初、小鹿田焼は日田の代官の命により、領内の日用的な陶器の需要を満たすために製造されました。

大正時代になると、民藝運動が始まりました。この運動の中で、柳宗悦は小鹿田焼を「世界一の民陶」と評価し、その美しさを世に広めました。同時期、イギリスの陶芸家バーナード・リーチも小鹿田焼に感銘を受け、その技術と美を讃えました。これにより、小鹿田焼の名は国内外で知名度を高め、その評価が一層高まりました。

小鹿田焼は、1970年に国の無形文化財として指定され、その伝統と価値が公式に認められました。現在でも小鹿田焼は、山間地域の職人たちによって一子相伝の技術と工芸品が継承され、生活の道具として使われ続けています。小鹿田焼はその純粋性と伝統的な美しさを守り続け、日本の陶芸文化に貢献し続けています。

小鹿田焼の魅力

小鹿田焼は、日本の伝統的な陶磁器であり、その魅力は多岐にわたります。まず、そのデザインのシンプルさが際立っています。小鹿田焼の食器や陶磁器は、派手な装飾をせず、シンプルで飾り気のないデザインが特徴です。この特性は、日常の食事やテーブル設定に適しており、料理を引き立てる役割を果たします。

小鹿田焼のもう一つの特徴は、「小鹿田おんた」という共同の印です。窯元はこの印を製品に押し、これは共同作業と共同の哲学を象徴しています。窯元個人の名前を入れないことで、小鹿田焼の価格が高騰することなく、手頃な価格で多くの人に利用されることができます。共同作業の精神が製品に反映されており、それが魅力の一部と言えます。

小鹿田焼は使い込む過程で独自の経年変化を遂げます。時間と共に表面に貫入(模様のようなヒビ)が生まれたり、蛇の目(うつわを重ねて焼く際にできる輪のような模様)に油が染み込んで表情が変化したりします。これにより、小鹿田焼は使い込むほどに価値が上がり、愛着が深まります。この経年変化が、陶磁器の魅力の一部であり、個々の作品に独自性をもたらします。

小鹿田焼の技法とその特徴

飛び鉋(とびかんな)
飛び鉋は、型作りした器に対して、ろくろを回しながらL字型の鉋をあて、表面を削り、模様をつける技法です。この技法の原型は、中国の北宋時代の陶器に見られ、その美しさと緻密な模様が評価されました。日本では、大正末から昭和初頭にかけて取り入れられ、伝統的な陶芸技法として根付きました。

刷毛目
刷毛目は、ろくろを回しながら、化粧土をつけた刷毛を小刻みに打ちつけて模様をつける技法です。この技法は、朝鮮の李朝から伝わりました。化粧土を刷毛で塗布し、刷毛を打ちつけることで、微細で均一な模様や細かな凹凸を生み出します。刷毛目の技法は、独特の風合いを持つ陶磁器の製作に使用され、その美しさが評価されています。

流し掛け
流し掛けは、スポイトなどに化粧土や釉薬を入れ、それを一定の高さから垂れ流すようにかけて模様をつける技法です。この方法は、釉薬や化粧土を流す速度や角度を調整することで、流れる液体の模様をコントロールし、器の表面に独特の模様や模様を作り出します。流し掛けは、アート性の高い陶磁器や、流れる液体の美しさを生かすために使用され、陶芸家によって工夫と技術が凝らされています。

小鹿田焼の代表的な窯元

黒木富雄窯
黒木富雄窯は、当主の富雄さんと息子の昌伸さんによる窯元です。共同の登り窯のそばに位置し、伝統的な技術を守りながらも、現代のライフスタイルに合った陶磁器を製作しています。昌伸さんは若手の陶工として注目され、その作品は広く評価されています。

坂本浩二窯
坂本浩二窯は、坂本浩二さんによって運営されており、美しい伝統装飾やフォルムが特徴です。その作品は、暮らしに馴染む使い心地のよさを備え、伝統的な民陶の魅力を表現しています。また、坂本浩二さんの息子である坂本拓磨さんも陶芸を手がけ、新たな挑戦を続けています。

坂本工窯
坂本工窯は、繊細な装飾と存在感ある器が特徴で、小鹿田焼の共同窯ではなく、個人窯として運営されています。工さんと創さんが作陶し、工さんは小鹿田焼協同組合の理事長も務めています。特に、創さんは次世代の陶工として、インスタグラムを通じて作品を発信し、小鹿田焼の枠を超えた作品を制作しています。

現代の小鹿田焼

近年ではカフェで使用されたり、モデルやインフルエンサーがSNSで小鹿田焼を使用した食卓をアップすることで「小鹿田焼=おしゃれ」なイメージが浸透してきています。

小鹿田焼の陶器市ー小鹿田焼民陶祭

小鹿田焼民陶祭は、大分県日田市の山深い場所にある「小鹿田焼」の里で、10月第2週の週末に開催されてきました。しかし、近年は豪雨の被害もあり残念なことに中止になっています。この祭りでは、9軒の窯元が特別に焼いた作品を、工房や軒先、物置などにぎっしりと並べて展示・販売します。小鹿田焼の職人たちが、自身の作品を地元の人々や訪れる観光客に披露し、その魅力を広く伝える場として、地域文化の一環として大切にされています。

まとめ

日常の食卓に馴染み、丈夫な小鹿田焼の器は普段使いにピッタリと言えます。価格もお手頃なので器の入門としてもおすすめの焼き物です。

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