「三川内焼」とは? 特徴や魅力、窯元や陶器市情報

三川内焼の起源と歴史的変遷

三川内焼(みかわち焼)は、16世紀後半の豊臣秀吉時代に、朝鮮出兵によって朝鮮から日本に多くの陶工がもたらされ、また唐津からも技術者が離散して日本に伝わりました。この時期に、現在の佐世保市周辺で、特に平戸藩の庇護を受けた三川内で、独自の陶磁器産業が栄えました。始めは主に陶器が作られていましたが、1640年頃には陶工巨関の子、今村三之丞によって白磁鉱が発見され、白磁の生産が始まりました。

江戸時代に入ると、三川内焼は平戸藩の御用窯として確立され、高度な技術が発展しました。特に透かし彫りや置き上げなどの精緻な技法が評価され、献上品としても江戸幕府に納められ、海外にも輸出される高級陶磁器として評判を呼びました。19世紀に入ると、徐々に庶民の生活にも広まり、一般の家庭で使用されるようになりました。

三川内焼の魅力

三川内焼は、日本国内だけでなく、世界中で愛されており、非常にキメ細かな地肌の白磁に呉須(ごす)と呼ばれる青い顔料で色をつけて仕上げられます。繊細な模様や絵が描かれるだけでなく、巧みな技術で作られた白磁も魅力的です。この焼き物は、シンプルでありながら高級感があり、どんな場所にも馴染むという特徴があります。

三川内焼の染付は、狩野派絵師の原画を起源としており、「一枚の絵のようだ」と評されます。呉須と呼ばれる顔料を筆に含ませ、水墨画のように濃淡をつけることで、立体感や遠近感を持った絵柄が表現されます。他の産地では一定の紋様パターンを使うことが一般的ですが、三川内焼の絵付けは山水や草花文など、一筆ずつ絵画のように描かれるのが伝統的です。

この精密な描写が可能にされる重要な道具は、主に熊野筆と呼ばれる筆で、その線の細かい表現力が高く評価されています。このように、職人の技術を支える道具にも注目が集まっています。

三川内焼の特徴

呉須絵
三川内焼の伝統的な絵付けでは、呉須(ごす)と呼ばれる絵の具を使用します。まず、下絵を描き、その上から呉須で濃淡をつけます。呉須は最初は黒っぽく見えますが、焼成することで青く美しいコバルト色に変化します。この過程で、熟練の技術が光ります。

具体的な手法は、白い素地に呉須で絵を描き、その後透明釉をかけて焼成するというものです。透明釉をかけることで、呉須の色が引き立ち、美しい青と白のコントラストが生まれます。この絵付けのプロセスは、職人の緻密な技術と美的センスが求められる作業であり、三川内焼の作品が独特の美しさを持つ要因となっています。

唐子絵
唐子(からこ)は、中国風の服装や髪型をした子どもの姿を描いたモチーフで、三川内焼の中で最も知られています。この図案は、中国では多くの男児に恵まれることが幸福の象徴とされており、唐の時代(8世紀)から工芸意匠に描かれていました。

三川内では、寛文年間(1661年ころ)に御用窯の絵師である田中与兵衛尚俊が、明の染付から着想し、唐子を考案しました。最初は自由に描かれていましたが、やがて様式化され、よく知られているのは唐子が松の下で蝶などと遊ぶ姿です。江戸時代後期から末期にかけては、口縁に「輪宝(りんぼう)」と呼ばれる連続した文様を配し、松と太湖石(たいこせき)、牡丹をセットにした様式が主流になりました。唐子の人数は、1人、3人、5人、7人などの奇数が一般的です。

明治以降、絵師によって唐子は個性が加えられ、その表情や姿も大きく変化しました。現代では、親しみやすく楽しい唐子像も描かれ、三川内焼の魅力の一部として愛されています。

透かし彫り
透かし彫りは、三川内焼における繊細な技法の一つで、「細工物(さいくもの)」として知られています。この技法では、器面の一部をくり抜いて模様を表現します。素地が乾燥する前に直接穴を開けていきますが、一つくり抜くごとに不安定になるため、作業は非常に慎重に行われます。

三川内焼では、この透かし彫り技法が全面的に用いられ、器の表面全体を彫りぬいて籠(かご)の編み目のように見せることが特徴です。この技法は、江戸時代の17世紀に始まり、明治・大正時代にはより複雑な技術が加えられた作品が生まれました。

白磁を細かく彫りぬいて光や向こうの景色が透けるように仕上げる透かし彫りは、三川内焼の中でも特に美しく、洗練されたデザインを持つ作品として注目を集めています。

三川内焼の代表的な窯元

平戸松山窯
三川内天満宮に祀られる「高麗媼(こうらいばば)」を祖先とし、江戸時代以来、三川内焼を代表する唐子の器をつくり続けている窯元です。松山窯では、伝統的な唐子絵や祥瑞(しょんずい)文様、唐草文様などの絵柄に加えて、「新しい伝統」を築くためにも積極的に取り組んでいます。伝統的な「献上唐子」だけでなく、現代のセンスに合わせた「創作唐子」にも挑戦しており、また、細工も得意としています。獅子や象、唐子などの古典的なモチーフを新しい視点で描き、活気ある作品を生み出しています。

心和庵
中里博彦氏と博恒氏の兄弟による窯元で、すべての工程を手仕事で行っています。Instagramでも人気で熱心なファンが多く、個展が開催されると早朝から行列ができるほどです。博彦氏は、繊細な筆使いで色鮮やかな絵柄を生み出し、食材とともに食卓に彩りを添え、心豊かな食の時間を演出するうつわ作りに取り組んでいます。一方、博恒氏は、三川内焼の伝統的な風合いを守りつつ、現代人の生活スタイルに合わせたうつわ作りを目指しています。彼らの作品は、伝統と現代の融合を感じさせ、多くの人々に愛されています。

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現代の三川内焼

三川内焼は、飾り物や普段使いの食器としてだけでなく、贈り物としても非常に適しています。作品に描かれた絵が縁起物として信じられており、特に大切な人への贈り物として人気があります。また、花瓶や可愛い置物、コーヒーカップなども製作され、伝統工芸品としての高級感だけでなく、カジュアルな日常使いにも適した作品が多くあります。磁器のためお手入れが簡単なのも魅力です。

三川内焼の陶器市ーみかわち陶器市

「みかわち焼陶器市」は毎年秋に、日本の三川内本町にある三川内焼美術館・三川内焼伝統産業会館前広場で開催されるイベントです。このイベントでは、地元の窯元や商社が30以上の特設テントを設け、日用品から美術工芸品まで50万点以上の商品を割安な価格で販売します。

陶器市ならではのイベントも開催され、多くの買い物客で賑わいます。また、三川内焼の3つの主要な窯元・商社である3皿山(三川内、木原、江永)が、多くの三川内焼を品揃えし、来場したお客様を歓迎します。陶器市では売り手と買い手が直接交渉できるという特長もあり、購買体験が一層楽しめるイベントとして親しまれています。

まとめ

高級感があり、繊細な絵柄が魅力の三川内焼は特に和食との相性が良く、器上級者からも人気です。ぜひ食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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